新しい御代の「坂の上の雲」はどこに

「まことに小さな国が開花期をむかえようとしている」、有名な歴史小説『坂の上の雲』の冒頭である。『坂の上の雲』は、「日露戦争を背景に、坂の上の青い天にかがやいているであろう、一朶の白い雲をめざして坂道を登っていく楽天家たち(明治の人たち)」を描いたものがたりである。

115年前の今日(2月8日)、日本が1904年に旅順港のロシア艦隊に対し日本海軍駆逐艦が奇襲攻撃をかけ、「日露戦争」の火蓋が切られた。当時の日本と今の日本、安全保障の観点からみると似ている点が多くある。

1.日露戦争当時<朝鮮半島をめぐる日露対立>

ロシアは清国に対し、ドイツ、フランスとともに下関条約に基づき日本に割譲された遼東半島を清に返還することを求め(三国干渉)で日本から返還させた。そしてその遼東半島にある旅順を清から租借する名目で手に入れた。そして1900年、清で起きた「義和団の乱」を鎮圧するために軍隊を派遣すると、そのまま満州を占領した。満州を支配したロシアは朝鮮半島を取るだろうと考えられ、もし朝鮮を取られたら日本は安全保証上危機的な状況に陥ることになる。

2.今日<朝鮮半島をめぐる日北中米関係>

ここ数年の主な出来事を時系列にすると以下のとおりとなる。

・北朝鮮は2017年9月3日に6回目の核実験(水爆実験)を実施し、日本及びアメリカを威嚇。

・2017年11月20日、トランプ政権は北朝鮮をテロ支援国家に再び指定。

・2018年2月、トランプ政権は経済制裁を通じて最大限の圧力をかけ、すべての軍事的なオプションはまだテーブルの上にあると軍事力の行使も辞さないと北をけん制し、北朝鮮を交渉の場に出す。

・2018年4月27日、南北首脳会談が実施され、「朝鮮戦争を終結させるための協議を行う」との声明を発表し、北朝鮮は和平をアピールする。

・2018年6月12日、シンガポールで初の米朝階段が行われ、北朝鮮が朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組むことを確認。トランプ大統領は、記者会見で韓国との合同軍事演習を念頭に、「戦争ゲームをやめる」と発言した。

そして2回目の米朝会談が今月下旬に行われると報道されている(BBCニュース)。米情報機関のトップによると、今もって北が核を放棄する可能性は低いとみられる中、朝鮮戦争の終戦宣言や在韓米軍の見直しや撤退を条件に、トランプ大統領が北とディールを行うのではないかとも言われている。トランプ大統領のアメリカファースト、安保コストで同盟国のタダ乗りは絶対に許さないという主張や、北大西洋条約機構(NATO)からの脱退を一時検討していたと報じられた(日経新聞)ことからも空論ではない。

今日も115年前と同様に朝鮮半島が地政学的、安全保障上のキーになっているが、115年前と違っているのは、日本が危機の最大の当事者であるのに、テーブルにつけないことである。

横田めぐみさんが北朝鮮に連れ去られて、はや40年以上が過ぎた。めぐみさんが北朝鮮で生存していることが判明した1997年、そこから21年が過ぎても、帰国した5人にとどまり、残る被害者の奪還はかなっていない。北朝鮮は被害者の解放に応じないばかりか、偽の遺骨を提示しその安否さえウソをついてきた。

そればかりか、日本列島を核で沈めると威嚇し、2012年から数えて実際にミサイルを54発も発射している。特に2017年8月29日に打たれた平壌近郊から発射されたミサイルは、北海道南部の上空を通過し、襟裳岬から1180キロの太平洋上に落下した。その後も、9月15日に日本列島を越えてミサイルが発射され、日本の頭の上をミサイルがゆうゆうと越えていった。

北朝鮮に近い文在寅政権は、慰安婦合意を実質的に破棄し、新たに徴用工問題で新たなカードを出して日韓政府の信頼関係はすでにくずれ、軍も旭日旗の件、レーダー照射の件で最悪の関係になっている。在韓米軍が撤退し、北主導の政権ができ、中国が半島への介入を強めてくるとなれば、115年前と同様の状況になる。そしてその危機の一番の当事者は日本であることは間違いない。

しかしこのような状況の中、安全保障上、もっとも重要な憲法改正の論議は憲法審査会でもまだまったく議論できておらず、世論調査も改憲是非はほぼ同率であり、安全保障に関する国民の意識は高くない。

平成も残り3ヶ月、5月からは新しい御代になる。そして日本の安全保障の分岐点になる時代になるかもしれない。新時代の人たちが登っていく坂の上には青い天が広がっているのか、それとも暗雲が漂っているのだろうか。

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