新しい御代の「坂の上の雲」はどこに

「まことに小さな国が開花期をむかえようとしている」、有名な歴史小説『坂の上の雲』の冒頭である。『坂の上の雲』は、日露戦争を背景に、坂の上の青い天にかがやいているであろう、一朶の白い雲をめざして坂道を登っていく楽天家たち(明治の人たち)を描いたものがたりである。

115年前、日露交渉が決裂し、日本が旅順港のロシア艦隊に対し日本海軍駆逐艦が奇襲攻撃をかけ日露戦争の火蓋が切られた。当時の日本と今の日本、安全保障の観点からみると似ている点がある。

1.日露戦争当時<朝鮮半島をめぐる日露対立>

ロシアはドイツ、フランスとともに、下関条約に基づき日本に割譲された遼東半島を清に返還することを求め(三国干渉)、日本から返還させるとその遼東半島にある旅順を清から租借する名目で手に入れた。そして1900年、清で起きた「義和団の乱」を鎮圧するために軍隊を派遣すると、そのまま満州を占領した。満州を支配したロシアはいずれ朝鮮半島を取る。もし朝鮮半島を取られたら、日本は独立も脅かされかねない危機的な状況になっていた。

2.今日<朝鮮半島をめぐる日米朝関係>

北朝鮮は2017年9月3日に6回目の核実験を実施し、日本及びアメリカを威嚇すると、トランプ政権は北朝鮮をテロ支援国家に指定した。翌年2月、トランプ政権は経済制裁を通じて最大限の圧力をかけた上、「すべての軍事的なオプションはテーブルの上にある」と軍事力の行使も辞さない構えをみせ、北朝鮮を交渉の場に引きずり出そうとする。すると、北朝鮮は4月27日、板門店で南北首脳会談を実施した。金正恩氏は共同宣言で、「南北は完全な非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した」と和平をアピールする。

2018年6月12日、トランプ大統領はシンガポールで初の米朝会談を実施し、北朝鮮を交渉の場に引きずり出した。会談の場で北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組むことを確認した。しかし、北朝鮮の非核化が期待された2019年2月27、28日ハノイでの2回目の米朝会談は、完全な制裁解除を要求しながらも核廃棄に踏み込まない金正恩氏にしびれを切らしたトランプ大統領は席を立ち、会談は決裂した(讀賣新聞)。

そして今現在も北の核廃棄は進展せず、北朝鮮は現在も日本の危機であり続けている。115年前と今日、同様に朝鮮半島が地政学的に安全保障上のキーになっているが、違っているのは日本が「危機の最大の当事者」であり、「拉致被害の当事国」であるのにもかかわらず、主体的な交渉ができていないことである。

3.当時国としての日本

横田めぐみさんが北朝鮮に連れ去られて40年以上が過ぎた。めぐみさんが北朝鮮で生存していることが判明したのが1997年、そこから21年が過ぎても帰国した方は5人にとどまり、数百名とも言われる被害者の奪還はかなっていない。北朝鮮は被害者の解放に応じないばかりか、偽の遺骨を提示しその安否さえ偽ってきた。

そればかりか、日本列島を核で沈めると威嚇し、2012年から発射したミサイルは合計50発を超えている。特に2017年8月29日に平壌近郊から発射されたミサイルは北海道南部の上空を通過し、襟裳岬から1180キロの太平洋上に落下した。その後、9月15日に発射されたミサイルも、日本の頭上をゆうゆうと越えていった。現在、日本全土を射程に収めるノドンミサイルは数百発とも言われている。

北朝鮮に近い文在寅政権は慰安婦合意を実質的に破棄した上、徴用工問題を持ち出し日韓政府の信頼関係は過去最悪の状況となり、抜き差しならない状況となっている。また、軍も旭日旗事件、レーダー照射事件で最悪の関係になっており、現状の韓国は、日本の安全保障と拉致問題解決への寄与は全く期待できない。

このような状況の中、安全保障上もっとも重要な憲法改正の論議は入り口の憲法審査会においてさえ、野党の反対によりまったく議論できていない(共同通信)。また、世論の改憲是非は、ほぼ半々であり安全保障に関する国民の意識は高くない(NHK)。

3.新しい御代の日本

日本を取り巻く状況は朝鮮半島だけでなく、向い風である。中国は平成の30年間で軍事費を50倍に増やして戦力を強化し、海洋進出をはかり、尖閣諸島周辺海域に侵入を繰り返している。期待が持たれたロシアとの北方領土交渉や日露平和条約の締結は、ロシアがもともと北方領土を引き渡すことがないと明らかになり暗礁に乗り上げた(NHKニュース)。

西側諸国の状況は、トランプ大統領のロシア疑惑は一応晴れた形だが、民主党は反発を強め議会で追及する姿勢を見せており、再選はまだ万全とは言えない(日経新聞)。フランスでは暴動が収まらず、ドイツもメルケル時代が終わり不安定化すると言われ、イギリスとEUはブレグジットで揺れている。

このような状況の中、本日(4/1)11時半に新元号が発表され、(産経新聞)いよいよ5月から新しい御代になる。115年前の日露戦争当時「まことに小さな国」だった日本は、経済的には大国になったが、安全保障において今は「まことに小さな国」である。新しい御代に日本は安全保障においても目覚め、開花期を迎えることができるのだろうか。また、新しい時代の人たちが登っていく坂の上の青い天には、一朶の白い雲が輝いているのだろうか、それとも暗雲が漂っているのだろうか。

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